こんにちは。国際金融アドバイザーの大田一耕史です。今日は我々が日頃当たり前に使っている「円」のその価値について。これから資産を築いていく方は、その資産をどの通貨で持つのか?どこで持つのか?ということは非常に重要です。
それは通貨にも価値があり、その価値は変動するからです。
円高と円安
円高ってどっちだっけ?と巷でよく聞くように、日頃当たり前に使っている円のその実質的な価値については多くの人が気にすることなく使用しています。
為替レートには、外国通貨の単位価格で、1ドルが何円で変えるのか?1ユーロが何円で買えるのか?が示されています。では、私達にとってもっとも重要なドル円レートについて見ていきましょう。通常円安とか円高というのは、ドルに対して円が安くなったのか高くなったのかを見ます。
1ドルが仮に100円であったとしましょう。これは1ドルを買うのに100円が必要ということを意味します。
もし1ドルが110円になったらどうでしょうか?今まで1ドルは100円出せば変えていたのに、110円出さないと買えなくなったということです。これはドルの価値が上がり相対的に円の価値が安くなったということです。
一方、1ドルが90円になると、今まで100円かかったドルが90円で買えることになります。ドル安となり相対的に円の価値が上がった、つまり円高になったということです。
ドル円
1970年までは1ドル=360円の固定相場制でした。今の1ドル=100円台から見ると3倍以上もの円を出さなければドルを買えないわけですから、とんでもない円安です。全ての輸入品も海外旅行も3倍以上かかったわけですから、この頃に外車やブランド品を保有し、海外旅行に行けたのはほんの一握りのお金持ちに限定されたのです。
ドル円レート
1973年 変動相場制へ完全移行 1ドル=300円を割れを記録
1978年 1ドル200円を割れを記録
1985年 プラザ合意以降1ドル=100円台の本格的円高時代へ
常に持ち歩いている、iPhoneなどのスマホや、衣類もほとんどが海外製ではないでしょうか?今日ではMade in Japanのものを見つけるほうが難しいように思います。
したがって日本だけで過ごしていると、投資やFXなどをやる方でないかぎり、「為替なんて気にしたことがない」「円高?円安?どっち?」という方が殆どのように思いますが、このように私達の生活費のほとんどは為替レートの影響を受けているのです。
円の価値は下がり続けている?
先程のドル円レートのチャートを見ていただくと、1971年から始まり2013年あたりまでは円高基調がずっと続いていました。2013年以降は少しばかり円安方向に戻しているように見えますが、これだけで円の価値は下がっているとは言えません。
円の価値を正しく測るには、「ドル円」だけを見るのではなく、世界のすべての通貨と比較してどうか?また各国の物価変動も考慮しなければいけません。その際に使用するのが「実質実効為替レート」です。
ドル円レートと実質実効為替レート(1980年~2018年)
図は「名目上の為替レートである米ドル対円相場(赤線)」と「実質実効為替レート(青線)」の推移を見たもので、1980年1月から2018年1月までの月次データを表示しています。(名目の為替レートは数値が小さいほど円高、数値が大きいほど円安ですが、実質実効為替レートの場合は数値が大きいほど円高、数値が小さいほど円安と解釈されますので、図では名目の為替レートと比較しやすいように実質実効為替レートを上下反転しています。)
名目の為替レートは1985年9月のプラザ合意以降、長期的な円高傾向が続いており、いまだに当時の為替レートに対して大幅な円高水準です。
一方、実質実効為替レートは、1995年をピークに、プラザ合意(1985年)以前の水準を超えてきています。これは日本の物価が海外に比べて上昇しなかった=デフレ時期が長かったことが原因の一つとして考えられます。最近海外もしくは米国に行かれた方は、その物価の高さに驚かれたかと思います。一方で日本はその物価の安さから、中国人が爆買しに来たりと日本には観光客が押し寄せるようになりました。要するに
海外から日本は安いと思われている=円安となっている
ということになり、また
日本円のピークは1995年。それ以降、円の力は下がっている
ということがこの実質実効為替レートのチャートからわかります。そしてGDPが1995年で頭打ちとなり、人口が減り続ける日本の通貨である日本円は今後
長期に渡って円安=円の価値が下がっていく
との見たてが普通でしょう。
日本の人口推移
地球視点に立てば円を買うか?
なぜ英語を話したいと思うのか?それは世界中の人とコミュニケーションが取れるようになるからですよね。それに対してわざわざバスク語(孤立した言語の象徴)を話したいと思う人はいないのと同じで、わざわざ通貨の価値が下がる国の資産を買おうとは誰も思わないはずです。
ですが、日本はあらゆることがガラパゴスであり、特に金融においては海外の優良商品の情報がなかなかなく、金融鎖国を行っていると揶揄されるくらいですから、多くの方は「どこの国で資産を持とう?」「どの通貨で資産を持とう?」と考える習慣がありません。
日本が一番!
海外は怖い!
と世界のことをよく知らない方ほどこの言葉をよく口にしますが、これは非常に危険な思考です。
地球視点=あなたが外国人だったら、わざわざ日本円を買うか?
と問うてみてください。またリスク分散の観点においても全てを日本円だけで保持することは危険です。
資産も日本円
投資先は日本株
日本国内にすべての資産がある状態
これではそれそのものの単体の価値が値上がりしたとしても、円が安くなってしまえば、世界から見るとそのプラスが相殺、もしくはマイナスとなってしまうことさえあります。
今後も日本に住み続けるのであれば、たいていの場合、収入は日本円ですから、資産は世界の基軸通貨のドルで保有、またはユーロやポンドなど複数の通貨に分散して海外に資産を持つのが賢い選択でしょう。
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日本国家は円安が嬉しい?
円安になるか、円高になるか?そんな事に賭けても仕方がありません。しかし日本国にとってはどちらが嬉しいのか?を考えることは重要です。
よく国家破綻を匂わせるニュースにも取り上げられるように、日本におけるその債務残高は約900兆円に登ります。(ここでは国家破綻については触れません。)
財務省 「公債残高の累増」より
この債務を返済できれば問題はないのですが、その返済能力=GDPは頭打ちとなっており、債務残高に対してのGDP比率は世界でも最下位層に位置します。要するに、全く返済できる兆しがないということになります。
財務省 「債務残高の国際比較(対GDP比)」より
となると、日本国にとってこの債務を減らす方法の一つとして、円安誘導があります。円安になれば
円資産の価値が減ると同時に、円の負債の価値も減ります。
国は円安にすれば債務を減らせる、と同時に国民の円資産も減るということから国家と国民の利害は対立するということを覚えておきましょう。
まとめ
今回は我々が日常的に使う通貨「円」についてと、資産を持つときの視点についてお話してきました。
日本に住んでいるから全て日本円で
と短絡的に考えるのではなく、地球視点=外国人だったらという視点で資産作りも、住む場所も、稼ぐ通貨も考えていくと、また人生の選択肢と可能性が広がり豊かになります。
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資産を外貨で持つ方法はいくらでもありますから、円だけの資産しか持ってないけどどうしたらいいの?という方はお気軽にご相談ください。またご自身の年金対策、最善の資産形成についてお知りになりたい方は以下のフォームよりどうぞ。